翻訳 外国語の明細書等の日本語による翻訳文は日本語として適正な逐語訳による翻訳文(外国語書面の語句を一対一に文脈に沿って適正な日本語に翻訳した翻訳文)でなければならない、とされています(審査基準)。このような逐語訳とかミラー翻訳とかの要求は特許翻訳者に時として結構なダメージを与えているようです。 しかしながら、例えば、特許請求の範囲を検討する場合は、請求の範囲に記載された発明特定事項や構成要件一つ一つが重要な意味を持ってきますので、こういった観点から逐語訳が要求されていると考えればよいと思われます。 原文の構文をそのままにして語句を訳すことが必要になるといったことではありません。このような意味での逐語訳は日本語と英語との間ではほとんど不可能です。 (平成25年11月)
商品の買取 中古品の販売業務を展開するには中古品の買取業務が必要になります。中古品の販売に用いられる商標は中古品の商標又は中古品の小売の商標となりますが、中古品の買取はどの商品区分に属しているでしょうか。実はこの中古品の買取という役務は独立のサービスとは考えられていません。中古品の販売業務に付帯するに過ぎない役務というわけです(拒絶不服審判不服2002-1454)。しかしながら、中古品の買取価格は業者によってかなり異なるようですので、中古品を売る側の者にとっては買取業者の混同は大きな不利益となりかねません。業者側から見た場合にそれだけでは事業として成立しなくても、一般人側から見た場合には識別されるべき役務のように思われます。 (平成25年10月)
小売商標について 商品役務区分の第35類には小売がサービスとして分類されています。審査基準では小売と小売の対象となる商品とは互いに類似するとされていますが、小売商標と商品商標とはどのように区別すればよいのでしょうか。例えばチョコレートの箱に付されたチョコレートの名前は商品商標であって小売商標ではないでしょう。それでは、お店の看板に表示する商標やウェブサイトの表題の商標は小売商標であって商品商標ではないのでしょうか。このあたりのことは現段階ではそれほど明確になっていないように思われますが、商標の使用領域は、商品商標としての使用領域と、小売商標としての使用領域と、商品商標及び小売商標の重複使用領域とに区分されるというのはわかりやすい考え方であり、商品商標権の効力は小売商標としての使用領域には及ばず、また、小売商標権の効力は商品商標としての使用領域には及ばないというのは簡潔な理論のように思われます。 (平成25年9月)
請求の範囲の書き方について 米国からの特許出願の特許請求の範囲では、「第1の端部及び第2の端部を有するシャフトと、」といったような若干奇妙な記載が時々見受けられます。米国では、「シャフトと、このシャフトの一端部に取り付けられた・・・」というように構成要素である「一端部」をいきなり持ち出すのは好ましくないと考えられています。日本の特許出願では、「端部を有するシャフト」のような記載はあまりされていないように思われますが、シャフトが両端部を有するのは当たり前であって、そのような当たり前の構成を改めて定義しておく必要はない、と考えられているのでしょう。 しかしながら、「当たり前」の構成というのはそれほど多くはありませんので、使用する用語はできる限り前もって定義しておくべきだとの観点からは米国の考え方の方が好ましいように思われます。このようなことに気を使わないと、「当たり前」とは到底言えないようなエレメントのいきなりの持ち出しも行われるようになり、請求の範囲に記載された発明の迅速な理解を妨げることになってしまいます。 (平成25年8月)
商標の指定役務について 以前に指定商品やサービスの特定はそれほど簡単ではないことを一般的に説明しましたが、商品と異なりサービスは有体物ではありませんので、サービスの特定や解釈にあたってはより一層の検討が必要となる場合も多くなります。そこで、折に触れてサービスの特定や解釈について検討していきたいと思いますが、まず手始めに、第35類の「商品の販売に関する情報の提供」とはなにか、について説明します。 「商品の販売に関する情報の提供」といっても直ちに具体的なサービス内容を想起できませんが、このサービスはいわゆるコンサルタント業の中に分類されています。したがいまして、「商品の販売に関する情報の提供」は、一般消費者に対する各種商品の紹介のような業務は含まず、コンサルタント業としての商品の販売実績等に関する情報の提供に限られることとなります(ARIKA事件)。勘違いが多いサービスなので注意が必要です。 (平成25年7月)
損害不発生の抗弁 商標権侵害による損害賠償請求では、ライセンス料相当額を損害の額として請求できると規定されています(商標法第38条第3項)。商標権者は商標権の侵害とライセンス料の額を立証すればよく、そうすればライセンス料相当額は必ずもらえるというようになっています。 しかしながら、「小僧寿し」事件などでは、この第38条第3項の請求に対して損害不発生の抗弁が認められています。平成24年(ワ)第6892号判決でも、損害不発生の抗弁が認められ、実施料相当額の損害も生じていないと判断されて、原告の使用料相当額の損害の賠償請求が認められませんでした。 ただし、損害不発生の抗弁を安易に認めてしまうと、商標登録の価値は極端に低下し、登録主義そのものの否定にもつながってしまいます。すなわち、登録商標又は類似商標を指定商品又は類似商品に無断で使用してはならないという大前提がくずれてしまいます。 (平成25年6月)
サポート要件について 特許法第36条第6項第1号は、特許請求の範囲の記載要件として、「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること」と規定しています。この記載要件はサポート要件とよばれていて、パラメータ特許の有効性を判断する際に登場する要件として知られていますが、結構適用範囲の広いもので、発明の目的効果を達成するためには必要不可欠である要件が請求項から外れていたり、発明の目的効果を達成するために必要である限定が請求項に施されていない場合などはこのサポート要件違反となり得ますし、範囲の不明確な限定が請求項に記載されている場合にもサポート要件違反が持ち出されることがあるようです。 したがいまして、特許権侵害論では、サポート要件違反による特許無効の抗弁により原告側特許明細書はボロボロになるまで攻撃される可能性がありますので、明細書は特許請求の範囲の解説書であるということを肝に銘じておくべきです。 (平成25年5月)
優先権の主張について 日本の国内出願を外国出願に移行させるには、この国内出願の優先権を主張して直接外国に出願する場合と、この国内出願の優先権を主張してPCT国際出願を行い、後に指定国に出願する場合とが考えられます。いずれの場合にも、優先権の主張が有効となるためには、パリ条約第4条の要件を満たす必要があります。 第1の要件は、国内出願に外国出願又はPCT国際出願の内容が開示されていることですが、それは当該国内出願と外国出願又はPCT国際出願との間の同一性の問題なので、それ程複雑ではない場合が多いでしょう。 しかしながら、第2の要件である、当該国内出願が最先の出願か、については、特に同一テーマについて多数の出願を行っている企業の場合、判断は複雑になります。優先権の基礎となる出願の判断を誤れば、優先権の主張は効力がなく、第2国出願日又は国際出願日を基準として特許要件が判断される可能性があります。 (平成25年4月)
米国特許法の先願主義移行について 2013年3月16日に米国特許法が先願主義に移行しました。3月16日を境に、それよりも前の有効出願日を持つものには従来の先発明主義が適用され、3月16日以降の有効出願日を持つものには新しい先願主義が適用されます。新たな先願主義では、発明者自身の公開に1年のグレースピリオッドが認められるだけではなく、発明者自身の公開の後の無関係の第三者の公開についても1年のグレースピリオッドが適用されるということです。やはり、理解するのに相当厄介な規定が含まれています。 (平成25年3月)
商品・役務の指定について 商標登録出願は、登録を受けようとする商標及び商標を使用する商品・サービスを特定して行います。商品やサービスの特定は、類似商品・役務審査基準などを参考にして行うこととなりますが、この商品・サービスの特定はそれほど簡単ではありません。商標を使用している具体的な商品・サービスが類似商品・役務審査基準に掲載されたどの商品・サービスに含まれるかの判断はかなり複雑だということです。例えば、いわゆる「健康食品」は、一昨年まで類似商品・役務審査基準に掲載されているどの商品にも属さないものでした(昨年追加された第5類のサプリメントが「健康食品」に該当します)。したがって、「健康食品」を指定したければ、「健康食品」を特定の表示態様でずばり指定しなければならなかったわけです。加工野菜を主原料とする健康食品を類似商品・役務審査基準に掲載されている「加工野菜及び加工果実」として指定すれば、めでたく登録になったとしても「健康食品」についての商標権ではないことになります。 「健康食品」のようにその取り扱いが周知のものについてこのようなまちがいは少ないと思われますが、具体的な商品・サービスをどのように記載するかの判断はしばしば厄介であり、類似商品・役務審査基準のどの商品に含まれるのか、あるいはいずれの商品にも含まれないのかという問題に頭を悩ませます。 商標は登録されたが権利内容はからっぽだった、ということがないようにすべきです。 (平成25年2月)
インターネットショッピングモールでの商標権の侵害 インターネットのショッピングモールの出店者が他人の商標権を侵害した場合、当該出店者だけでなくショッピングモールの運営者も責任を追及されるのか、という相談や質問を受ける場合があります。ショッピングモールで実際に商品を販売しているのは出店者であり、運営者は出店者に販売場所を提供しているにすぎないので、運営者は商標権侵害とは無関係だとも考えられますが、運営者は出展者への販売場所の提供について対価を得ていますので、そこでの出展者の行為について無関係であるとはいえないとも考えられます。平成22年(ネ)10076号商標権侵害差止等請求控訴事件では、楽天市場での出店者による商標権侵害に関し、運営者である楽天には法的な責任はないとしつつ、出店についての管理・支配や利益享受を条件として、「出店者による商標権侵害があることを知ったとき又は知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるに至ったときは、その後の合理的期間内に侵害内容のウェブページからの削除がなされない限り」、運営者に対しても差止等の請求を行うことができると判断されています。 (平成25年1月)
中国-小売商標登録制度の導入 中国では来年(2013年)1月1日から商標登録出願で小売又は卸売り役務を指定できるようになります。小売又は卸売り役務は第35類に分類されますが、一般的な小売商標登録制度の導入といったわけではなく、現段階では、薬品や医療用品等に限って小売又は卸売りを指定できるにすぎないようです。そして、小売又は卸売り役務と小売又は卸売りされる商品とは原則的に類似しないとして取り扱われる予定とのことです。 小売又は卸売り役務が小売又は卸売りされる商品と非類似のものとして取り扱われると、小売等についての第35類の商標登録出願だけでは、当該小売等にかかる商品について第三者が同一の商標を登録することを阻止できなかったり、商品についてすでに登録商標を所有していても、当該商品の小売等について第三者が同一の商標を登録することを阻止できないことともなりそうなので、今後明らかとなるであろう制度の詳細について注意していくことが必要です。 (平成24年12月)
特許用語について 特許明細書には他ではあまり見かけない言葉がよく使用されます。このような特許用語を自在に使用できないと特許のプロとはいえない、のように言われていた時代もあったようですが、今でもこのように話す人は極少数だろうと思われます。 ところで、IPDLの公報テキスト検索で請求の範囲を対象とし、いくつかの特許用語の使用件数を調べてみたところ、「固設」、「止着」、「軸着」及び「内設」のヒット件数はそれぞれ、約2万7千件、約1万9千件、約1万4千件及び約1万1千件でした。これに対して、「係合」、「当接」、「押圧」及び「嵌合」のヒット件数はそれぞれ、約41万件、約36万件、約23万件及び約28万件にも上り、これらの用語がかなりの頻度で使用されていることがわかります。 それでは、一般的な言葉とは言い難く、いろいろな場面で攻撃を受けやすい特許用語がなぜ特許明細書では使用されるのでしょうか。まず、ある構造や状態を的確にかつ簡潔に表現する言葉が容易に見つからないときに、特許明細書での多くの使用例や特許関係の用語集の定義などから、このような構造や状態を的確に指し示していると解釈できる特許用語を使用する、という場合があります。あるいは、ある構造や状態を一般的な言葉で表現できなくはないが、そうすると若干リズム感の良くない文章となり記載不備を指摘されるおそれがあると感じるときに、一般的な言葉と同様な意味を有していると考えられる特許用語を使用する、という場合もあるでしょう。「固設」や「止着」などについては他の一般的な言葉で容易にしかも簡潔に表現できるので、「なんだ、この言葉は」と後々責められるリスクを冒してまで使用する実益はない、ということで使用頻度が低くなっているとも考えられます。こういった点から判断すると、「嵌合」などは使用する実益があるのかちょっと疑問です。 広辞苑などに掲載されていない言葉は使用してはならない、といったことはないと思いますが、特許用語はどのように解釈されるのかがはっきりしない言葉なので、不必要に多用しないことと、使用する場合には明細書の作成側と依頼側とで意味内容を確認し対処しておくことが必要です。 (平成24年11月)
ジェプソンクレーム 米国出願用のクレームを作成する際にジェプソン形式のクレーム表現を用いるのは不適当だと、一般的には考えられています。前提部分が公知であるとの自認につながるということがその理由とされています。 ところで、日本でジェプソン形式のクレーム表現について解説したり説明したりする場合、ジェプソン形式=2パート形式(EP型)=日本の「・・・において(であって)、・・・を特徴とする・・・」=“characterized in that”を前提としていることが多いように思われます。 しかしながら、米国では、ジェプソン形式のクレームとは、CFR1.75(e)に定められた形式をいうとされ(MPEP2129 III JEPSON CLAIMS)、そのCFR1.75(e)では、A phrase such as “wherein the improvement comprises”を用いる形式が記載されています。そして、このようなジェプソン形式のクレーム表現を用いると、米国では公知の自認と判断されるということです。 また、日本の「・・・において(であって)、・・・を特徴とする・・・」というクレーム表現で、「・・・において(であって)」の部分が常に公知であると認定されるわけでもありません。 したがって、上述の前提は根拠を欠いているように思われます。 “characterized in that”も“the improvement comprises”も米国出願用には用いないのだからどちらでもよいではないか、とも言えなくはないのですが、用語の意味内容が曖昧だと議論や理解に混乱を生じさせます。 (平成24年10月)
英文明細書のお話 米国は明細書の記載要件について厳しい審査を行います。したがいまして、米国への特許出願では基本的な記載要件を必ずチェックし、要件不備がないようにしなければなりません。例えば、クレームに記載した特徴については図面に開示されている必要がありますので、将来のクレームアップを考えた場合、実施例に記載したエレメントもできるだけ図示しておく必要があります。また、ある装置をクレームする際に、その周辺機構の構成を用いて当該装置の構造を特定する場合にも日本とは違った注意が必要です。さらに、現在ではだいぶ緩やかに判断されるようになりましたが、クレームでの“A or B ”という表現は避けておいたほうが無難です。“one of A and B ”などを使用したほうがよいでしょう。 なお、基本的な文法を確認しながら英文明細書を作成するのも忘れてはなりません。日本からの出願ではたびたび使用されているが、ネイティブの出願では多くを確認できないような表現も決して少なくありません。例えば、“A is easy to be 他動詞の過去分詞”といったような表現(例として、The ink is easy to be jetted out from a ink jet head.)は、日本からの出願の英文明細書でたびたび見られますが、ネイティブの出願では、“A is easy to 他動詞の原形”(A は不定詞の目的語)とされることが多いようです。 (平成24年9月)
マドプロ(マドリッド協定議定書に基づく国際登録出願)について マドプロは複数国で商標を保護する場合の手続の簡略化と費用削減を目的とする商標の国際登録制度です。簡単にいえば、WIPOに国際登録出願を行なうことにより複数の指定国で商標の保護を受けることができるようになるといった制度です。各指定国で商標の保護を受けるには、各指定国での審査をパスしなければなりませんが、拒絶理由通知が出されないかぎり、指定国での代理人の選任は必要がありません。現地代理人の費用を削減できることがマドプロの大きなメリットと考えることができます。 ただし、ここで注意しなければならないのは、マドプロは概念的に明確とはいえない指定商品を取り扱うには不向きではないかということです。すなわち、商標の使用に係る商品と国際分類等に記載された商品との対応関係が明確な場合にはマドプロのメリットを十分に引き出すことが可能ですが、そうでない場合には、各国への直接出願も検討すべきだと思われます。
(平成24年8月)
PCT特許出願について 特許出願について有用な情報をインターネットで簡単に入手できるようになったこともあり、個人の発明家の方などが自分でPCT特許出願を行うケースも増えているようです。国際段階ではPCT特許出願を日本語で処理できますので問題はなさそうですが、各国エントリーでは明細書等の翻訳が必要となるため、この段階から案件を受任してもらいたいという依頼を受けることがあります。しかしながら、ここで注意すべきことは、PCT特許出願時の日本文に不明確な個所が多いと、ネイティブになんとか理解してもらえるような英文に仕上げることがかなりむずかしくなってしまうということです。すなわち、不明確な個所が多い日本文を日本人が読む場合と、不明確な個所が多い日本文を翻訳した翻訳文をネイティブが読む場合とでは、理解度に大きな差が生じてしまうと思われます。 米国の場合には、エントリー時にバイパス出願を行って意味の通じる正確な英文に仕上げるといったこともあながち不可能ではありませんが、とにかくPCT特許出願時には、日本文の分かりやすさや正確さなども十分にチェックしてくれるような発明相談などを利用するのが得策でしょう。 (平成24年7月)
複合商標について 使用している商標又は使用を予定している商標が文字商標と図形商標の場合には、文字商標と図形商標を別々に商標登録出願するのが原則です。文字商標と図形商標を複合させて一つの商標登録出願ですませるのは得策ではないでしょう。複合商標はあくまでも文字商標と図形商標とを複合した一体のものであり、文字商標と図形商標を別々のものとして包含するものではありません。 しかしながら、後願商標の登録を排除する効力は文字商標、図形商標それぞれに認めるのが原則なので、経費削減の観点から複合商標の出願を希望される相談者もいらっしゃいます。ただし、他人の商標の使用にクレームをつける権利侵害の場面では、他人の商標使用を排除する効力が文字商標、図形商標それぞれに認められるとは限りませんし、文字商標及び図形商標を別々にしか使用していない場合には、不使用取消審判をかわしきれないおそれもあります。 (平成24年6月)
シフト補正の制限について 今後の特許出願手続に大きな影響を与えるものとして特許法第17条の2第4項に規定するシフト補正の制限という制度があります。シフト補正の制限は平成19年4月からの出願に適用されますので、今年あたりから拒絶理由通知に応答するときに原則として考慮すべき事項となります。 このシフト補正の制限は、大雑把にいうと、特許請求の範囲のはじめの方に記載された請求項(例えば請求項1や請求項2)に係る発明のいずれかを本願中心発明として認定し、以後、認定された本願中心発明を変更したり拡張したりすることは認めない制度ということができると思われます(非常に大雑把なとらえ方です)。 シフト補正の制限でよく問題として取り上げられるのは、請求項1が「A」、請求項2が「A+B」、請求項3が「A+C」のとき、請求項2の「A+B」の発明が本願中心発明と認定されると、請求項1を補正して「A+α」とすることや請求項3を補正して「A+α+C」とすることは認められなくなります。これは非常に厳しい制限ですので、運用面での対処を期待したいのですが、とりあえず、出願審査請求時に特許請求の範囲を見直すことをお勧めします。 (平成24年5月)
商標の(R)マルアール記号について 出願している商標に審査官から登録査定が届き、商標登録料を納付すると、数週間程度で当該商標が登録され、それを証する商標登録証が送られてきます。 ここで初めて、当該商標に(R)記号を付すことが許されます。(R)記号は、"Registered"を意味しますので、登録されていない商標に(R)を付すべきではありません。未登録商標に(R)記号を付しますと、ブランドイメージを傷つけるおそれがあります。 未登録商標には、必要であれば、TM(商品商標)やSM(役務商標)を使用して下さい。 なお、未登録商標に(R)記号を付した場合、虚偽表示として罰則の適用があるかについては、肯定、否定両説があるようですが、肯定説の方が多数説のように思われます。 (平成24年4月)
新規性喪失の例外の適用範囲の拡大について 本年(平成24年)4月1日から、特許についての新規性喪失の例外の適用範囲が広がります(改正特許法第30条)。 特許を受けるためには、特許出願まで発明を秘密にしておかなければなりません(特許法第29条)。ただし、特許出願前に発明を公にしても、刊行物に発表するなどいくつかの場合に限り、例外としてなお秘密性を失っていないものとして取り扱っています(改正前特許法第30条)。 今回の改正により、特許出願前に発明品を販売した場合などでも例外の適用の対象となりますので、例えば、発明品についての消費者の反応をみながら特許出願の必要性を判断するといったことも可能となります(例外の適用を受けるためには一定の要件を満たすことが必要です)。 しかしながら、特許出願前の発明の公開はいろいろなリスクを伴いますので、特許法第30条を利用する場合には慎重な検討が必要となりそうです。 (平成24年3月)